労働事件①
今から10年くらい前、中国人による日本での爆買いが騒がれていました。
そのころの話になりますが、当時在籍していた事務所で、在日中国人の方々から労働事件の相談を受けました。
相談の内容は、ある会社で働いていて退職したが、給与、残業代、交通費などが支払われないので、それらを請求したいという内容でした。
弁護士になって初めて相談から訴訟の最後まで単独で進めた事件でしたので、思い出に残っています。
ある会社というのは、中国人の社長Aが経営する日本の会社です。
Aは、日本で人材派遣会社を経営し、中国で中国人のIT技術者を募集、採用し、日本に呼び、日本の会社に派遣することで利益を上げていました。なお、派遣先の会社も中国人が経営する会社だったりもします。
相談者は、X1~X4の4名でした。
X1とX2は、Aの妻Bが代表取締役を務める会社Y1に採用され、日本で働き始めました。なお、実質的な経営者はAです。
しかし、Y1が残業代などを支払わないことからY1に対して不信感を抱き、時期は異なりますが、それぞれY1を退職しました。
一方で、Y1は、中国において社員の募集を掛け、Aは、Y1を代表する立場で採用活動を行い、X3とX4を新規に採用しました。
しかし、まもなくしてY1は事業を停止し、解散しました。X3とX4は、Y1が解散することを聞かされずに採用されました。X1とX2も、Y1が解散することを知りませんでしたが、Y1が解散する前に退職しています。
Y1の解散と時期を同じくして、Aは、新たに会社Y2を設立し、代表取締役となり、Y1とまったく同じ事業を開始しました。Y2の営業所、ロゴマーク、ウェブサイトなどは、Y1のそれとまったく同じものでした。
Aは、来日したX3とX4に対して、さしたる事情も説明せずに、Y2と雇用契約を締結するよう働きかけ、両名は同意し、Y2の社員として日本で働き始めました。
しかし、両名は、X1らと同様の理由で、それぞれ時期は異なりますが、Y2を退職しました。
退職に対する報復であったと思われますが、Aは、X1~X4に対して、退職前1~2か月分の給与や交通費などを支払いませんでした。たまたま私が相談を受けたのはこの4名でしたが、被害者は実際にはもっといます。また、「出向手当」を固定残業代として支給する旨の雇用契約書や就業規則などを根拠に、それまでに発生した残業代を支払いませんでした。
私が相談を受けて事情を聴いたところ、4名のうち2名の方は、日本語での会話にも問題がないレベルでした。残りの2名の方も、読み書きは日本人と同程度にできるほど優秀な方々でした。話し方や佇まいも、私がそれまで抱いていた中国人のイメージとは異なっており、この件を通じて中国の方に対する認識が変わったことを覚えています。もちろんそもそも日本に好意がある方々ではありますが。
ところで、Y1が解散してしまった以上、X1とX2にとっては、未払賃金等を請求する先の会社がすでに存在しません。
そこで、Y1とY2は実質的に同一の会社であるとして、現に営業を続けているY2に対して未払賃金等を請求することとしました。
X3とX4は、もともとY2の社員でしたので、Y2に請求をしました。
Y2(の代理人弁護士)と交渉をするも、当然ながら話はまとまらず、裁判に発展しました。
裁判の争点は多岐にわたりましたが、主な争点は、法人格否認の法理と固定残業代でした。(次回に続く)
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