裁判官の交替
1 裁判の途中で裁判官が交替することがある
民事裁判は、ご存じのとおり、結論が出るまでにかなりの時間がかかります。
事件の内容によっては、数年にわたって裁判が続くことも珍しくありません。
原告の主張に対して、その1か月~1か月半ほど後に被告が反論、その1か月~1か月半ほど後に原告が再反論、といった形で、双方が主張と証拠を提出する手続が繰り返されます。
争点が多ければ多いほど、このやり取りは長くなります。
裁判の終盤になって主張が複雑になってくると、こちらの主張に対してあえて反論せず、わざと次回期日に持ち越すような対応がされることもあります。
その場合、結果として1回分の期日が実質的に空振りとなり、2~3か月程度、余計に裁判が長引くことになります。
また、裁判所にも夏季休廷期間や4月の年度初めなど、通常よりも期日が入りにくい時期があります。
そのため、こうした事情が重なると、裁判はなかなか先に進みません。
そうこうしているうちに、担当していた裁判官が別の裁判官に交替することがよくあります。
2 裁判官は3年で異動する
裁判官は、一般的に3年の間隔で異動(転勤)します。
特に毎年4月は人事異動の時期ですから、長期間続いている裁判では、担当裁判官がよく交替します。
これは、裁判官自身にとっても大変な制度だと思います。
裁判官が交替すると、それまで事件を担当していた裁判官から、新しい裁判官へ事件が引き継がれることになります。
弁護士としては、裁判官に事件のポイントを正確に理解してもらうことも重要な仕事の一つです。
裁判官はあくまで中立な立場ですが、こちらの主張のどこが重要なのか、相手方の主張にどのような問題があるのかを、裁判官に正確に理解してもらうことは、裁判を進めるうえで非常に重要です。
ところが、裁判が始まってから、例えば1年ほどかけて主張、立証を積み重ね、ようやく裁判官に事件のポイントを理解してもらえたと感じたところで、裁判官が交替してしまうことがあります。
新しい裁判官からすれば、それまでの訴訟記録を読んで事件を理解するところから始めなければなりません。
3 裁判官が交替すると、裁判の流れが変わることもある
裁判官が交替すると、それまでの裁判の流れが変わることがあります。
例えば、それまで担当していた裁判官に対して、こちらの主張がなかなか理解されていないように感じ、形勢が不利だと思っていたところ、裁判官が交替したことで、新しい裁判官から別の角度から事件を見てもらえるようになり、状況が変わることがあります。
反対に、それまで順調に進んでいたように感じていた事件について、裁判官が交替したことで、改めて説明や立証が必要になることもあります。
当事者からすれば、「同じ事件なのに、裁判官が変わるだけで判断が変わるのはおかしいではないか」と感じるかもしれません。
しかし、裁判も最終的には人が判断するものです。
裁判官によって、事件の見方や問題意識にある程度の違いが生じること自体は、避けられない面があります。
4 裁判官の異動が裁判の長期化につながることもある
裁判官の交替が、裁判の長期化につながることもあります。
例えば、裁判が終盤に差しかかった時期に裁判官の異動時期が近づいている場合、新しい裁判官に事件を引き継ぐことを前提として、期日の進行が慎重になる、つまり、遅くなることがあります。
判決を出すためには、これまで提出された膨大な訴訟記録を整理し、双方の主張や証拠を検討したうえで、判決書を作成しなければなりません。
また、和解による解決を目指す場合にも、双方の当事者を説得し、条件を調整するための時間が必要になります。
そのため、異動までの期間が短い場合には、無理に結論を出すのではなく、一定の手続(例えば、尋問手続)を残した状態で、新しい裁判官に引き継ぐという進め方になることがよくあります。
長期間にわたる民事裁判では、こうした裁判官の異動が事件の進行に影響することがあります。
裁判を起こした、あるいは起こされた当事者からすると、担当裁判官が途中で交替することは、決して小さな出来事ではありません。
数年単位で続く裁判だからこそ、弁護士としては、裁判官が交替する可能性も念頭に置きながら、その時点の裁判官だけに理解してもらうのではなく、訴訟記録を読んだ別の裁判官にも事件のポイントが伝わるような主張・立証を積み重ねていくことが重要だということになります。


